第64話

入賞者が次々と発表されていきます。


そして、いよいよ、優勝者の彼の番がやってきました。


大学生で、しかも彼の年齢でこの賞で優勝するのは、史上最少年とのことで、審査員の先生方が、彼の映画について、色々とコメントをしているようでした。


しかも、彼の撮った映画は、審査員全員一致で、優勝候補だったそうです。


つまり、彼以外で優勝候補は誰もいなかったということです。


つづいて、インタビューが行われました。


ありきたりな質問に、彼は苦笑しながら答えていましたが、その姿は堂々としていました。


「今、一番誰に、この受賞の喜びを伝えたいですか?」


「もう、伝えました」


「その方は、今この会場にいらっしゃるんですか?」


「います」


「では、その方に向けて一言お願いします」


「菜月!一生、俺について来いよ…それから…この場で、好きだと言えたら云おうと思ってたらことがある」


彼は、なんと私に向けて、そんな言葉を口にしました。


大勢の報道陣のいる中で。


「明日、籍入れるぞ」


私は、びっくりするばかりで、またしても言葉が出ませんでした。




そして、彼は、一躍有名人となり、新聞なんかでも報道され、将来有望な映画監督として、紹介されました。



それから、私たちも籍を入れて、晴れて夫婦になりました。



彼のお父さんも、さすがにびっくりしたみたいで…彼のお兄さんを通して、祝福の言葉を言ってくれたようでした。

彼の優勝と、私たちの結婚について。



籍は、あのあとすぐに区役所に行って入れました。


学生結婚なんて、いまどき、どうなのかなぁって思うけど、彼となら、私は一生一緒に歩いていけると確信してるから、いいんです。


私の両親は、もちろん、普通に喜んでくれました。

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