第63話
「ふふ、言うと思った」
「俺の才能をみくびるなっていうの」
「うん、ごめん」
「いや、俺こそ、ごめんな、しばらく構ってやれなくて」
「いいよ、一樹の夢が叶う事は私の夢でもあるんだから」
「やっぱ、お前で良かった」
「え?」
「ずっと一緒に生きてきたいって思える相手がお前で良かったよ」
…できれば、電話じゃなくて、面と向かって言って欲しいって、この時ほど思ったことはありません。
っていうくらい、破壊力のある言葉でした。
でも、この先もっと嬉しいことを言ってもらえるんですけどね。
それは、今は秘密ということで。
「一番最初に、伝えたかったんだよな、菜月に」
「嬉しい、ありがとう」
「コンテストの発表会みたいのがあるんだけど、一緒に来れるか?」
「え?うん、いいけど?」
「絶対、お前のことを離さないけど、覚悟できてる?」
「うん、大丈夫」
そんなわけで、後日、コンテストの発表会に参加することになりました。
その前に、私は、彼のご両親と対面することになりました。
なんでも、映画のコンテストで優勝したら、私のことを家族に紹介したかったようなのです。
頑固おやじだと聞いていた、彼のお父さんは、見るからに頑固そうな方でした。
彼は、一方的に、コンテストで優勝したことと、私と結婚することを伝えると、会話もろくにしないで、彼の実家を出て行きました。
私は、挨拶もろくにしないまま、彼の家を出たことを後悔するものの、何も言えませんでした。
そして、今日、ついにコンテストの優勝者たちの発表が行われる日がやってきました。
彼は、スーツ姿で普段と違う感じなんですけど、すごく似合っていて素敵でした。
私も、それ相応の格好で、同伴させてもらいました。
会場に入ると、たくさんの報道陣が集まっています。
映画同好会に入っているとはいえ、映画のコンテストには、そんなに詳しくはない私だったのですが、見なれたテレビ局のリポーターがいるところを見ると、相当大きなコンテストだったんでしょうね。
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