掴んだ手を離さずにいたい

第62話

彼から、自分にふさわしい、いい女だと言われて、最高のクリスマスを過ごした私たちは、また現実に戻ります。


いや、現実なんですけど…夢のような時間だったから…


でも、良く考えたら、最初のころを考えると、本当に今でも、夢じゃないかなって、思ってしまいます。


私は、彼の一言一動にばかり心を捉えられているばかりなのに、彼は違ってました。


私の両親に挨拶をしてくれたり、結婚の約束までしてくれて。


そんな彼なのに、やっぱり大好きな映画のことだけは、かた時も忘れてはいなかったみたいで、最近は、春休みなのをいいことに、映画を相当撮っているようでした。


でも、彼の夢は映画のコンテストで優勝することが目的ではなくて、あくまでも、監督になること。


コンテストでの優勝は、通過点に過ぎないと思っているようでした。


なので、春休みといえど、なかなか会えずにいました。


彼にとっては、大学時代にコンテストで優勝することが、目下のところ最大の目標のようでした。


3年になり、彼は同好会のほうにも、あまり顔を出さなくなりました。


コンテストの締め切りは、6月の末。


それまでに、今の自分の中での最高傑作を生み出したいと思っているようでした。


それにしても、すごい自信ですよね。


初めて応募するコンテストで、一発で優勝を取る気でいるんだから。


さすがは、彼です。


そして、迎えたコンテストの結果発表の日。


私は、家でおとなしく彼からの連絡を待ちました。


本当は、一緒にそばにいたかったけれど、

でも、どんなに自信家の彼でも、簡単に優勝するなんて、難しいと思ったから。


その時、自分がどんな顔をしたらいいのか

分からなくて、私は、一緒にいることを敢えて、避けました。


でも、強運の持ち主って本当にいるんですね。


いや、運じゃないのかな。


才能なんでしょうか?


夕方近くに、彼からあった電話の内容は、


「コンテストで優勝したから」


というものでした。


まさか本当に成し遂げるなんて思ってなかったから、私は、びっくりして言葉に詰まりました。


「祝福の言葉もないのか」


と言いながら、彼は苦笑しています。



「いや、違うの!本当に優勝したんだなって、なんか、びっくりしちゃって…えっと、おめでとう」


「ああ、ありがとう、まぁ、余裕だったけどな」

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