第61話

「早く、こっちに来いよ」

「そんな、簡単に早くとか言わないで…」


「せっかく、もう一泊して、この部屋取れたのに、もったいないだろ」

「…ダメ、やっぱ無理!」

「何もしないから、来いよ」

「だって…」

「ほら、早く」


そう云って、差し出された手を私は、そっと握りました。


「よし、聞き分けがいいな」

「聞き分けって、子供じゃあるまいし…」

「まだまだ、俺から見たら、お前は子供っぽいところがあるぞ?」

「酷い、そりゃー色気無いかもしれないけど…」

「色気ねぇ…その前に、その体を隠してるタオル禁止!」

「そんな、無防備な状態見せれないよ!」

「いいか、温泉に入る時は基本、タオルを湯船に入れるのは禁止なんだぞ」

「で、でも…」

「お前なぁ…もう一緒に一晩寝た仲だろーが、何、いつまで恥ずかしがってんだよ!」


そう云うと、彼は、私の体からタオルを引き離しました。


「キャー! もう、エッチ!」


「エッチって…十分、そういうことやった後に言うかな、普通」


「もう、何言ってるの?!バカバカー!!」

そう云って、私は、彼の胸をどんどん叩きました。


「綺麗だよ」


ふっと笑いながら、彼が私を見てます。


ここは、昨日とは違う部屋。

個室に温泉のついている、極上の部屋でした。

彼は、本当は最初っから、この部屋を借りたかったようなんですけど、すごく混んでいて、借りれなかったんですけど、今日、もう一泊することになり、空室か確認すると、運が良かったのか、空いていました。


というわけで、私たちは、昼間っから、こうして、一糸まとわぬ姿で、二人で温泉に入ろうとしているところなのですが…


昼間っから、私の全裸なんて、見せられたもんじゃありません。


確かに、今朝まで、一緒に二人して裸でしたけど…


でも、いきなり普通に裸で一緒に温泉なんて、恥ずかしすぎます。


そういうわけで、一緒に温泉に入ることを、硬くなに拒否してたんですけど…


先に彼が、温泉に入っちゃって、私をずっと待ってるのを見たら、私も入らずにいられないじゃないですか。


で、意を決して入ったら…

タオルを奪われてしまい……


目の前で綺麗だとか言い出して…


「子供っぽいとか言ったのは冗談だよ、菜月は、俺にふさわしい、いい女だよ」


や、あの…


いい女とか言われると照れるんですけど…

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