第60話

さすがに一緒に一夜を共にしたとは言え

私のキャラクター的には、恥ずかしさは拭えなかったです。

時計を見ると6時を指していました。


「そろそろ起きる支度しないとね」


「もう一晩泊って行ってもいいんだぞ?」


そう云って彼は、にやりと笑います。

あんなに、余裕が無いとか言っていたのに、もう自信満々という感じ。


この腕と胸で私は、彼に…

と思うと、急に恥ずかしさが込み上げてきました。

思わず蒲団を頭からかぶると、彼がたくしあげます。


「どうした?」


「や…なんか今更恥ずかしくなってきて…」


「恥ずかしいって何が?」


そう云って、彼は蒲団の中に潜り込んできて、私と視線を合わせます。


「もう、やだ、恥ずかしいから、こっち見ないで!」


「もう、今更だろう、全身くまなく見てしまったわけだし」


「それでも、恥ずかしい…」


私は、赤面しました。

あんなに熱い時を過ごしたというのに。


彼は、ふっと笑うと、そのまま私を抱き寄せて、両腕で、抱きしめました。


「まだ、離れたくないな」


「あの、でももうすぐ朝ごはんとか…」


「飯なんて、食わなくても、もっと美味いものを食べたからいいよ」


「もう、何言ってるの!」


そう云って、私は、彼の胸をどんどんと叩きました。


「もう、何があったって、離さないからな」


そして、ここにきて、また甘い台詞。


「こら、返事は?」


「うん、ずっと離さないで」


恐る恐る、彼の目を見ながら、恥ずかしさを隠しきれないまま言いました。


「じゃあ、やっぱ、もう一泊決定だな」


「え?なんでそうなるの?」


「俺が甘えたりないからだ」


え?



えーと…彼ってそんなキャラでしたっけ?


ちょっとびっくりした私でした。


「つーか、お前もあんまり、甘えてこないよなぁ、なんか、彼氏というか一生を共にする相手として、俺は寂しいよ」


甘えるなんて、そんな…

ずっと見てるだけの人が彼氏になってくれただけでも幸せなのに、これ以上何を望めと言うんでしょうか。


「甘えるって、どうしたらいいの?」


「キスをねだるとか」


「やだ、恥ずかしいー」


「俺は、ねだったことあるぞ、ちゃんと」


「一樹と、私はキャラが違うもん!」


「じゃあ、俺から勝手にキスする」



そんなわけで朝から、私たちは、濃厚なキスをしてしまうのでした。

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