第56話

多分、こんな素敵なクリスマスは、なかなか無いだろうなぁ。


それが私が最初に抱いた感想。


一面の雪に囲まれながら、二人で雪景色を見るのか…彼と一緒に。


一晩過ごしながら…


そんなことを、またまたぼんやり考えながら、フロントの人に案内されながら、彼と私は、ホテルの一室へと足を運びました。



「うわー!すごい!素敵な部屋ですね!」


思わず、案内係の人に、そんなことを叫んでしまいました。

それくらい、綺麗な部屋だったんですよ。

和風の家具が配置されていて、多分、彼、相当奮発してくれたんだと思います。


実際、電車代も、全部払ってくれてますからね!


こんなに、お金使ってもらってもいいんだろうか…


とか心配になっちゃいました。


「お食事は、夕食、朝食すべて、こちらで済ませてもらいます。夕食が済み次第、お布団のほうは、用意させてもらいますので」


案内係の人は、その他の説明をすると、部屋に私たちの荷物を置いて、去っていきました。


とりあえず、窓のほうに足を運ぶと…


白銀の世界が広がっています。


「綺麗…」


きっと夕方になると、街の明かりが見えたりして、もっと綺麗なんだろうな。

と、思ってると、後ろから、いきなり、彼が私を抱きしめてきました。

ふわりと、包み込むように優しく。



「早く、こうしたくて仕方なかった…」


「うん…」


私は、そう云うのが精いっぱいでした。


「あー、このまま離したくないなぁ…もう、温泉なんか行かないで…」


「え?温泉行かないの?」


と、私が振り向きざまに言うと


「ばーか」


そう云って、彼は、私にキスをしてくれました。



それから、私たちは、浴衣に着替えて、温泉へと向かいました。


彼は、ちょっと残念そうに、ずーっと掴んでいた私の手を離して、微笑みながら


「俺のことばっかり考えすぎて、のぼせないようにな」


そう云って、男湯のほうに入っていきました。



そう忠告してもらって良かったのかも…


実際、私は、彼のことばかり考えて、家のお風呂では、いつものぼせているくらいなので。


温泉は、すごく広くて、綺麗で気持ち良かったです。


1時間くらい、湯船に浸かって、女湯から出ると、彼が椅子に座りながら、飲みのもを飲みながら、私を待っている姿が見えました。


それは、横顔だったのですが、端正な顔立ちでした。

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