第52話

「何を冗談言ってるの?一樹らしくないよ」


「そうだよな」


「でも、ありがとう、私の両親に自ら挨拶しに来てくれたのは、嬉しかった」


「ずっと一緒にいるっていったじゃん」


「あ…」


そう云われて、私は、初めてキスをしたあの夜の電話のことを思い出しました。

そうか、そこまで思ってあの時、あんなこと言ってたんだ…。

そのことに気付くと、私は胸がキューンとなってしまいました。

乙女心ですね。

でも、それに気付いて、なんとも思わない女子がいるなら、お目にかかりたいです。


こんなに見た目だけじゃなく、性格も男らしくて、格好いい人に思われてるなんて、私は幸せ者ですよね。


なんて、自慢を誰にしても恥ずかしくないくらいだと私は思ってます。


って、ほとんど惚気ですね。


「でも、今日は、とりあえず帰るかな」


「え、帰っちゃうんだ…」


「寂しい?」


「…うん、ちょっと」


そう云うと、彼は私の頭をポンポンとしてから


「また、日を改めて、襲わせてもらうからな」


と言って、にやりと笑いました。


私は、その言葉を聞いて赤面状態。


もう、こんな場所で何を云うのかと思ったら、そんなことを…。


私は、顔を上げられずにいました。


「今度って、そう遠くはないから覚悟しておくように」


そう云って、駅の改札で、彼と私は別れました。


そう遠くはないって…


覚悟って…


そんなことを言われると、逆に身構えちゃいます。


初めての時って、みんなこんな感じなんでしょうか…


とか、恥ずかしくて友達にも聞けない…


胸をドキドキさせながら、私は、自分の家への道を一人歩いて帰るのでした。


それにしても、今日は本当に大きな一歩です。


彼と、卒業しても、ずっと一緒にいられること。


それを私の家族に公認してもらったこと。


多分、今の私は、今までで一番幸せに浸っていたんじゃないかなぁと思います。


そんな風にして、私の両親と彼の対面は、無事に終わりを告げるのでした。

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