夢の続きは一緒に

第47話

「そういえばさー」


「ん?何?」


「菜月って一人っ子なの?」


「うん、だからお兄さんのいる一樹が羨ましい」


今日は、彼のバイトが休みで、久々にゆっくりとデートをしていました。


といっても、デートは大抵映画館って、パターンが多いんですけど。


それも毎回一日に2本とか見るから、やっぱり、彼って、ちょっと凄い。


映画監督になりたいって夢も、あながち嘘じゃない・・・そんな気がします。


「毎回、悪いな、映画ばっかりに付き合わせて」


「そんなことないよ、一樹が見てるものを私も一緒に見たいから」


「俺は、いつも一緒に見ていたいけどな」


「え?」


「お前さー 俺と一緒に、俺の夢を追いかけてくれる自信ある?」



え・・・


『いつも一緒に見ていたい』


『一緒に夢を追いかけてくれる自信ある?』



なんだか、すごいことを言われてるような予感はするんですけど、いまいち意味が分かりません。


すると彼が、カバンから、小さな小箱のようなものを取り出しました。


「俺たち、まだ学生だけど、俺の心は決まってるから」


「・・・決まってる?」


「卒業してからでもいいけど、言う事だけは、ちゃんと言っておかないとな」



な、何だろう・・・


やっぱり狼宣言でもする気なんでしょうか?


でも、それにしては、あまりにも大袈裟すぎる話し方です。


「・・・・・・・」


彼は、ずっと無言で、私の目をじっと見ていました。


それも真剣な眼差しで。


その状態が3分続きました。

しびれを切らした彼が言いました。


「分からない?」


「小箱の中身は、想像つくけど・・・」


「うん」


「・・・え?!まさか・・・嘘でしょ?!」


「いや、本気」


小箱の中身は多分・・・指輪だと分かったんですけど、彼が『本気』という言葉を口にして、私は、やっと彼の真意が読めました。


「受け取れ」


有無を言わせず、彼に指輪をはめられたのは言うまでもありません。


「結婚しよう」


彼は、私の目をきちんと見ながら言ってくれました。


結婚・・・


まだ、学生なのに・・・

付き合って間もないのに・・・

そこまで考えてくれてるんだ・・・


私は、嬉しさのあまり、何も言葉が出てこなくて、喜びをかみしめていたんですけど


「返事は?」


と聞かれて、ようやく


「お願いします」


の言葉を返しました。

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