第46話

「そういえば、ずるいですよ!」


「お前なぁ、一夜を共にした男女なのに、まだ敬語使うわけ?」


一夜って!!!


いえいえ、私たちに限って、あれ以上の展開は無かったんですよ!!


なのに、彼は、ちょっと大げさです・・・。


でも、確かに、一緒に、朝まで過ごしたことは、事実なわけで・・・。


ここは、私が、頑張って敬語を使わないようにしなくちゃいけないと思いました。


「・・・ずるい・・・」


「何が?」


「だって、おはようのキスって、寝てたらするって、私、言ったのに・・・」


「いいじゃん、オレ、ずっと目閉じてたし、今も目閉じてるし。菜月が言ったんじゃん、起きてたら、タヌキ寝入りでもしててって」



確かに・・・私、そんなこと言った記憶ある・・・。でも、なんだかんだで、彼にうまく丸めこまれてるような・・・。


「なんか、また眠くなってきたな」


「え?」


彼は、私の手首を蒲団の中に入れると、そのまま、私のことをギュッと抱きしめました。


えーーー!!

まさか、朝から、狼になっちゃうとか?!

そんなわけないよね?!


「まだ・・・時間あるよな?」


「あ・・・うん、まだ6時くらい」


「じゃあ、もうちょっと、このまま寝させてて」


「ダメ・・・眠れなくなっちゃう・・・」


「菜月が?」


「うん・・・」


「なんで?」


「もう、意地悪・・・」


「じゃあ、もう少し、意地悪させて」


そう云って、彼は、私を抱きしめたまま、言葉を発しなくなりました。

本当に、眠かったのかな?

と私が思っていたら


「ずっと、菜月が起きるまで、起きてた」


「本当に?!もう、無茶なんだから」


「菜月の寝顔を独り占めしてるんだなって思ったら、もったいなくて眠れなかった」


「私、変顔じゃなかったかな?」


「可愛いに決まってるだろ、オレの彼女なんだから」


うわー!!

いきなり、可愛いとか、オレの彼女とか言わないでほしい・・・照れる・・・照れます・・・。


「このまま、ずーっとこうしてたいな」


「・・・いいよ、好きなだけ、眠ってて、今度は、私が、ずっと寝顔見ててあげる」


「誰の?」


「・・・一樹の寝顔・・・ずっと見ててあげる」



「でも、くっついてると、キスしたくなる」


「じゃあ、今度は、一樹からして?」


「おはよ・・・菜月」


そうして、私たちは、朝を迎えたのでした。

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