第44話

「せ、先輩、やめてくださいー 私、重いから!」


「やだ」


「やだ・・・って、もう!子供じゃないんですよ?」


「じゃあ、菜月は、おとなしくお姫様だっこされてろ」


「無茶言わないでくださいっ」


「・・・一緒の部屋にいるのに、別々に寝るなんて、オレが寂しい」



ドクン・・・・


と私の心臓が静けさの中響いた気がしました。


先輩が、寂しいなんて言ってくれたの初めてだと思う、多分。


なんだか、今日の先輩も甘さいっぱいって感じですーー!!!!


私は、どうしたらいいのやら・・・



先輩が、そっとベッドに私を横たえてくれました。


そして、先輩も、私の隣に並んで横になりました。


じっと私を見つめています。


そっと、手が私の顔に伸びてきました。


思わず、肩がびくっとなりました。


「やっぱ、緊張してたんだ」


その手は、私の頬に触れました。


優しく撫でるように。


そして、先輩は、もう片方の手で、私をギュッと自分の方に引き寄せました。


「あ・・・」


「ねぇ、ご褒美は無いの?」


「ご褒美って、何のですか?」


「ベッドまで運んだ、ご褒美」


「えっと、じゃあ明日、美味しい朝食作ります!」


「オレ、朝飯ってあんまり食べないんだよね」


「じゃあ、おはようのキスとか・・・」


と、冗談で言ってみました。


「あ、それいいねー でもさ、オレの方が先に起きちゃったら、どうするわけ?」


「・・・タヌキ寝入りしててください」


「やだ、今すぐ、欲しい」


と、言って、先輩は、私に軽く口づけました。


「やっぱり、狼になったら、怖いよな?」


「・・・すみません、さすがに今日は・・・」


「いいよ、オレ、菜月と隣同士で眠れるだけで嬉しいから」


「先輩・・・」


今日の先輩は、甘いですよね?


甘すぎますよね!!!


この期に及んで私にどうしろと・・・


「名前で呼んで?」


「え?」


「オレの下の名前で呼んで?」


「一樹・・・・」


私が先輩の下の名前を呼ぶと、また唇にキスが落とされました。


「眠れるまで、ずっと、呼んで?」


「一樹・・・・」


「菜月、愛してる」


何度も名前を呼ぶたびに、先輩に甘い言葉とキスをされて、私は、ただそれだけで、もうどうにかなりそうでした。


そうして、夜は更けていくのでした。

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