第43話

と、舞い上がってる場合じゃないですね!


私は、慌てて、先輩の手を引きました。


「ダメです!明日もバイトで大変なんですから、ちゃんと、ベッドに寝てください!」


「そんな、やわな体してないから、大丈夫だよ」


「ダメですー」


「分かった」


意外と、先輩は、あっさりと引き下がってくれたんですけど、この時、私は、まだ先輩の真意に気付くはずもないのでした。





ベッドで寝ている先輩は、すやすやと

寝息をたてて熟睡しているようでした。


かたや私は、先輩と同じ部屋で寝ていると

思うだけで、なかなか寝つけません。


何度も寝がえりをうちながら、そっと

眠りの波が訪れるのを待ちました。


「菜月」


と名前を呼ばれました。


今、この部屋にいるのは、先輩と私だけ。


ということは、先輩は、寝言で私の名前を呼んでくれたのかな?


私の夢を見てくれてるのかな?


なんだか嬉しいな・・・


と思っていたら


先輩が再度私の名前を呼びます。


「菜月」


ベッドの方を向くと、先輩がこちらを見ているのが、暗がりでも分かりました。


「あれ?先輩、眠ってたと思ったんですけど・・・」


「軽く睡眠とった」


「軽くって、ちゃんと寝なきゃだめですよー」


「お前こそ、さっきから寝がえりばかりうって、眠れないんじゃないか?ソファじゃ寝心地悪いだろ?」


「だ、大丈夫でですよ」


まさか、先輩と一緒の部屋で緊張して眠れないとは、ちょっと言えませんでした。きっと、先輩のことだから、『小学生か』って、突っ込んできそうだから。


「オレは、もう十分睡眠とったから、菜月がこっちで、今度は寝ろ」


「ダメです!バイトあるんですから!」


「お前なー オレの肉体年齢何歳だと思ってるわけ?」


「えーと・・・それは・・・」


「とにかく、こっち来い!」


「えっと・・・寝つけなくなっちゃいました?」


「違う」


「じゃあ、なんで?」


「一緒の部屋にいるのに、別々に寝るなんて、普通のカップルじゃありえないだろ」


「そうですか?」


「そう、違ってても、違うなんて言わせない」


そう云って、先輩は、ベッドから起き上がり私のソファのそばまで来ました。


そして、いきなり私をお姫様だっこするじゃないですか!!


やっぱり、先輩、狼になっちゃうの?!

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