第38話
私の部屋は大学から歩いて15分くらいの、わりと近いところにあります。
ですが、この雨。
そう簡単に家に着けるはずもなく・・・。
いつもより、5分くらい長い時間がかかって、到着しました。
先輩が、先日あげてくれた部屋より、少し狭いけれど、それほど古くないアパートの二階に、私の部屋はありました。
ふと先輩の肩を見ると、ずぶぬれになっているじゃないですか!
当たり前か・・・
私の肩を濡らさないよう、ずっと傘の中から出さないようにしてくれたんだもの・・・。
さっきの『送り狼』というフレーズに、ものすごく反応を示してしまった私ですが、急に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいました。
「先輩、肩、そんなに濡らしてしまって・・・すみません」
「いーよ、俺、男だし、これくらいどうってことない」
「どーってことありますよ!だって、シャツから、水がしたたってるじゃないですか!」
「これくらい、絞れば、なんとかなるだろ」
「でも・・・・」
「でも、何?」
「それじゃあ、私の気がすみません、とりあえず、あがってください!タオル持ってきますから!」
そう云って、私は、部屋の玄関のドアのカギを開けました。
先輩を玄関に待たせたまま、タオルを持ってきて、手渡そうとした時、その手に触れました。
冷たい・・・。
先輩、こんなに冷たい手で寒くないのかな?
思ったことを私は素直に訊きました。
「さすがに、寒いけど、タオル借りたから大丈夫」
「もう!何強がり言ってるんですか!あがってください!Tシャツとジャージくらいだったら、ありますから、着替えてください!」
「着替えるって、ここで?」
「他にどこで着替えるって云うんですか!」
「お前こそ、着替えなくていいのか?結構濡れてるぞ?スカートの裾とか」
「私は、先輩が、ずっと肩を寄せていてくれたから、大丈夫なんです!」
「菜月って、ぼんやりとしたタイプだと思ってたけど、ここぞって時は、しっかりしてるんだな」
「え?」
「いや、こっちの話。じゃ、遠慮なく、お邪魔します」
そう云って、先輩は、私の部屋に、あがってきました。
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