第37話

「面倒なことになったな、菜月、行くぞ!」


山下先輩が、たまり場から姿を出すより早く、吉野先輩は私の手を繋いで、校内を走り出しました。





で・・・そのまま大学から外に出たのはいいんですけど・・・・。



まさかの通り雨かと思いきや、どしゃぶりの大雨に!



近くのコンビニに入るも、傘は一本のみ。



とりあえず、その一本をキープしながら、私は、策を練りました。


そして、決死の覚悟で先輩に云いました。



「先輩、申し訳ないんですけど、家まで送ってもらってもいいですか?」



「別に、申し訳なくないよ、だいたい、傘一本しかないんだから、どっちかが送ってくしかないだろ?」


「でも、先輩、今日ってバイトあるんじゃ?」



「今日は、この天気だから生憎中止だろうな、だから気にすんな」


「えー!じゃあ今日は、本当に家まで送ってもらえるんですか?」


決死の覚悟で云った私のテンションは非常に、あがりました。

もう、嬉しくて嬉しくて仕方ありません。



「送り狼にならないって自信は、ないけどな」




「え?」



「いや、なんでもない」




え?!今先輩、なんかすごいこと云ったよね?!



送り狼?



え?!


嘘々!


やっぱり、送ってもらうのやめようかな・・・


と思ったら、もう先輩は、コンビニから出ようとしてるところでした。



ど・・・どうしよう。



さっきのって、先輩の本気?


それとも私をからかったのかな?



そう思いながらも、とりあえず私も、コンビニを出て、先輩の隣に並びました。




「傘、小さいな」


「・・は、はい・・・」


「もうちょっと、こっちに寄れば?」


「あ、いえ・・・いいです」


「そんなことしてたら、肩が濡れるだろ」



と云って、先輩は、私の肩をギュッと自分の方に引き寄せました。



私の心臓が・・・鼓動が、激しくなってます・・・。



せ、先輩・・・私の息がもたないんで、もうこれ以上何もしないでください・・・。



なんてことを云えるはずもなく、私は、先輩に、ぴったりと寄り添いながら、どしゃぶりの雨の中を先輩と二人で歩いていました。


私の住むアパートへと向かって。

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