第33話

「でさ、兄貴でかけるんじゃなかったっけ?」


「え?俺そんなこと云ったっけ?」


「云ってた、まさか二人の邪魔とかする気

じゃないよな?」


「邪魔なんて、そんな気はないよ、ただ、俺としては、一樹の彼女さんと、もっといろいろ話がしたいというか」


「あ、私もいろいろ聞きたいです!私の知らない先輩のこと」


「だよねー」


そう云って、先輩のお兄さんは、にっこり笑いました。


ビジュアルだけじゃなく、このキャラならお兄さんのほうがもてるような、そんな気がしたので、何気なく話の流れで、そのことに触れてみました。



「菜月ちゃん、誰かいい子知らない?」


「え?」


「兄貴、彼女と別れて今、半年くらいなんだ」


「そ、そうなんですか?!すみません!

私ってば、何余計なことを聞いてるんだろう・・・ごめんなさい」


慌てて、頭を下げる私。



「まぁ、そのおかげで、同棲してた兄貴が彼女と別れて、この家に俺が転がり込むことが出来たんだけどな」


「そうそう、一樹、俺に感謝しなさい」


お兄さんは得意そうにそう云いました。


「あ、そういえば、まだ私、お兄さんの名前聞いてなかったですよね?」


「『お兄さん』?いやーこんな可愛い子にお兄さんなんて、呼ばれるとは、今日はついてるな」



人の事はいえないけれど、先輩のお兄さんって、ちょっと天然が入ってて憎めないところがあるなって思いました。



そんな、お兄さんの様子を冷たい視線で見つめる、先輩。



それに気づくお兄さん。


(結局、いまだに名前が分からない)



「あ、えーと、俺、出かけてくるよ、菜月ちゃん、ごゆっくり!」



慌てるようにして、お兄さんは、アパートから追い出されるように出て行ってしまいました。


そして、そこに取り残された、私と先輩。



一人暮らしじゃなくてホッとしたのもつかの間。


あっという間に、先輩と私の二人になってしまって、私は、また動揺し始めました。



「あ、えーと、先輩、とりあえず、ビール冷やしますか?それとも、もう飲みます?」


冷蔵庫を見た後に、振り返ろうとした瞬間、


私は、先輩に抱きしめられていました。



・・・・不意打ちだ・・・・。

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