第32話

先輩の家は二階建てのアパートの角でした

わりと新しい感じのアパート。


いくら先輩があんなにバイトをたくさん

かけもちしているとはいえ、

こんなに綺麗なアパートに住む余裕なんて

あるんだろうか?



と、私の頭にはふと疑問がよぎりました。


が、部屋に入ってすべて解消されることになるのでした。



まず、先輩は、アパートの横のボタンを押しました。



あれ?


先輩って一人暮らしじゃないの?


驚く私をよそに、ドアを開ける人物が。


え?


何?


どうなってるの?!


と驚く私を差し置いて、出てきたのは


先輩と変わらないくらい綺麗な顔立ちをした、男の人でした。



でも、先輩より少し大人っぽい感じ。



もしかして・・・・?



「あの、先輩、こちらの方は・・・」


「兄貴」


「どうも、はじめまして。菜月ちゃんって

云うんだよね?一樹から、話はいろいろ伺ってます。会わせてくれって、一樹に何度も云ってたんだけど、なかなか会わせてくれなくて」



先輩とは違って、先輩のお兄さんは、とても人懐っこい感じでした。


というか、初対面とは思えないくらいの対応で、私は、正直戸惑ってました。


あと、一人暮らしだって思って、勇んで、この部屋に来てましたからね。


私の、あの勇気は一体・・・とも思いました。



なんだか、緊張しすぎて損しちゃったな。


と思いました。


まぁ、勝手に緊張してた私が、バカなんですけど。


ですけど・・・まさかお兄さんと同居とは

普通は思わないですよね?!


だいたい、私、先輩にお兄さんがいるなんて、初めて知ったくらいだし。


「一樹が、こうやって女の子を家族に見せるのって、多分俺が初めてだと思うんだよね。どうですか?うちの弟は」


「あ、はい!私にはもったいないくらい素敵な方で、恐縮してます。いつも」


「こんなやつに恐縮なんてしなくたっていいんだって!愛想は無いし、喜怒哀楽に乏しいし、結構、俺様キャラでしょ?」



お、お兄さん、いくら身内だからって、云っていいことと悪いことが・・・。

いや、確かに図星じゃないとは言い切れないけれど、でもそこまで云わなくても。



「それでもいいんだって。惚れた弱みだよな?菜月?」


お兄さんのいる前でいきなり、呼び捨てにされて、私は、また動揺しました。

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