第26話

「菜月」


うわっ

また名前で呼ばれた


「は、はい」


「さっきから、ずっと立ちっぱなしで疲れないか?」



疲れるというか

先輩の隣に座ったりしたら

心臓がもたなくなりそうで

ここにいるんですけど


「座れば?」


まさか、先輩の言葉に反対もできず


遠慮がちに隣に座りました


「そんな離れて座られると、複雑だな」



はい、一番端っこに腰掛けてます

もう、心臓に悪いんでこれ以上は勘弁してほしいんです


なんて考えてるうちに

先輩が、近づいていました


吉野先輩ってこんなに積極的だったの?!


今日は先輩にドキドキさせられっぱなし

心臓・・・何個あったら足りるだろう・・・


先輩の整った綺麗な顔立ちが

私のそばまで近づいてきました


30㌢


20㌢


10㌢


5㌢


3㌢



「目、閉じて」



私が目を閉じて間もなく

先輩と私の唇が重なりました



初めてのキス


優しくて、柔らかくて

ちょっと意外


もっと強引とか

荒々しいのかなとか

想像していたから



唇が触れるだけの

優しいキス



甘い甘いキスでした



自分の人生なんて

まだまだ長いうちに入らないけど

多分

人生で一番素敵なキスだったと

思う




まだまだずっと一緒にいたい

と思ったものの

さすがに朝まで一緒というわけにもいかず


終電に間に合うように駅に向かいました



名残惜しかったけれど・・・

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