第20話

心臓が急にバクバクし出しました


もちろん、糸井君にドキドキしたんじゃないですよ


ここで吉野先輩の名前が出てきたから



まさか、私が吉野先輩が好きだってばれてるとか?



そんな、それはないよね



先輩と私は、あの講義の時以来接点なんて、ないんだから



「でも、あの人、恋愛に興味なさそうだし、安全圏ですよね」



分かってる


そんなの言われなくても知ってる



でも、同じサークル仲間に言われたとなると、さすがにへこみます



「って、ことで俺にしときません?」


糸井君、やっぱり食い下がってきました


「俺、年下ですけど、結構しっかりしてますから、年のことなら、気にしなくていいですよ」



いや、あの、そういうの関係なくして

私が好きなのは・・・


「マジ 好きです 付き」


糸井君が言いかけた時でした


「すみません!冷二つお願いしまーす」


という山下先輩の大きな声が



山下先輩

ありがとうございます!



と心の中で叫びながら

私は、席を立ちました


「あの、香山先輩」


「ご、ごめん、携帯鳴ってるから、ちょっと出てくる」


そう誤魔化して、店外へと出ました


出るときに、さりげなく吉野先輩の背中なんかを眺めたりしながら




「ふぅ・・・」


出てきたのはいいんですけど、あまり長居していると、糸井君が追っかけてきそうです


「もう、なんでよりによって、サークルのメンバーに告白されちゃうんだろう・・・」


自分でも気付かぬうちに、私の口からは、そんな言葉が出ていました



「サークルの奴は、問題外なのか」


気がつくと、私の目の前に、吉野先輩が立っています



「あ、えーと・・・」


ち、違います


いや、そうだと言えばそうですけど


でも、違うんです、全員がそうだっていうわけじゃないんです



言い訳を考えながら、ふと思いました



あれ?


人に無関心なはずの吉野先輩が

私の言葉に反応してる



「今のは聞かなかったことにしてください」


そう思いつつ、とりつくろったような笑顔で返答しました



「前に、言ったよな?」


先輩は、私の目をじっと見据えて言いました


「はい 言われましたね」


「さっきから、糸井にずっと口説かれてるようだけど」



うわ・・・聞かれてたんだ・・・


しかも、吉野先輩の悪口みたいなこと、糸井君が言ってたのも・・・

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