第19話

「誰か好きな人いるんですか?」


はい、います

今、目の前を通った人です


と言って断るくらい、意見が言えたらいいんですけど言えません


「いないなら、俺と・・・」



糸井君が言いかけた瞬間、お店の入口が開きました


「お前らー何やってんだよ、遅いぞ、もう会計済ませてきたからな」


山下先輩が、いかにも酔っ払いっぽい大声を出して、こちらに向かってきました



助かった



「すみません」


私は、苦笑いしながら、山下先輩のほうに歩み寄りました



山下先輩に歩み寄りつつ、吉野先輩の姿を探しながら


あ、いたいた

一番後ろのほうから、吉野先輩が出てきます


サークル内でも一番背が高いから、すぐ分かるんですよね



糸井君の告白に、ちゃんと返事しなくちゃいけなかったのに


曖昧に誤魔化してしまいました



というか、吉野先輩がいるだけで私、もう先輩のことばかり考えちゃうんです



「よーし、二次会行くぞー」


山下先輩は、また大声を張り上げました

集まったメンバー全員参加で、二次会に行くことに


やった

今度こそ、吉野先輩と一緒にお酒が飲める



と思っていた私だったのですが

そうそう、うまく話が進むはずもなく・・・



次のお店はこじんまりしたお店だったんですけど


なんとなく気づけば、一番壁際に座る羽目に・・・


しかも、隣は、さっき私に告白をしてきた糸井君です


吉野先輩とは、離れてしまいました



さりげなく、横目で、吉野先輩のほうをみると、今日も日本酒を飲んでいました


先輩に、お酌させてもらいたいなぁ

で、映画の話とか語ってもらいたいなぁ


そんな私の心を知ってか知らずしてか、糸井君が、再び、端の席をいいことに


囁くような声で私を口説いてきました



「俺、見た目もそんな悪くないと思うんですよ」



そうかもしれないけれど、吉野先輩に恋をしている私にしてみれば・・・です


糸井君も確かに、もてるって話聞いたことありますけどね


悪くはないんでしょうけど、私の目に、いつも入っているのは、吉野先輩だけなんです



「吉野先輩には敵わないんでしょうけど」



え?

何?

今、なんて?

吉野先輩の名前出てきた?

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