第18話

え・・・


「実は、狙ってたんですよね、先輩のこと」


糸井君の口から、思いもしない言葉が出てきました


色々な男子に声をかけられる私なんですけどサークルのメンバーには、幸いなことに好意を持たれずにいたのです



幸いというか・・・

吉野先輩は、あんな感じなんで諦めてますけど

ほんとは、諦めたくないんだけれど



そんな中での、後輩の糸井君の発言に

私が動揺しないわけもなく



どうしよう・・・

いつものように、付き合ったと仮定しました

そして、結果も想定してみました

別れるのは、目に見えてます


でも、サークルのメンバーと別れて気まずくなって

それでも、普通どおり、あのたまり場に、吉野先輩を見るためだけに顔を出す


そんなこと、私にはできないと思いました



かと言って

ここで断るのも気まずいし


断れない自分の性格を、この時ほど呪ったことは、ありません



「ほんとは、隣の席狙ってたんですけどね、今日」



どうしよう、どんどん口説きモードに入ってる



「ああやって、飲み過ぎたーとか言ったら、絶対、香山先輩が来るって、思ってました」


計算づくしだったのか

それに、乗せられた私って・・・



「先輩、今、フリーなんですよね?」


告白タイム開始です


あぁ、またしても誘導尋問にやられちゃうんだ


そして、断れず、付き合ってしまうんだ


そう思っていたら、なんていう偶然なんでしょう


遅れてきた吉野先輩が現れました



「あ、先輩」


糸井君は、さすがに吉野先輩の前で、私を口説く自信は無かったようで

いつも通りの態度で、吉野先輩に声をかけました


「わりぃ、バイトが長引いちゃって」


「今からだと、時間ぎりぎりっすよ、飲みたいなら、ハイペースで飲まないと」



「あぁ」


そう言って、吉野先輩は店内に入っていきました


吉野先輩も来たんだ



久しぶりに見た先輩

相変わらずカッコいいです

先輩が入っていったお店のほうを思わず、じーっと眺めてしまう私でした



「話を戻して と」


糸井君、改まってます


「フリーなんですよね?」


「あ、うん・・・」


「じゃあ、俺たち付き合いません?」


どうして、付き合っている人がいないというだけで、そうなるんでしょうか・・・



私は、吉野先輩が例え今、フリーでも、そんな風には言えないです

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