第17話

当初はビアガーデンで


ということだったのに

大学のそばの居酒屋になってしまいました


たまり場で適当に時間をつぶして

いい時間になったころ

サークル仲間で居酒屋に直行



今日は、平日ということもあり、お店の中は、空いていました



はぁ

吉野先輩

来ないんだ



と思うと、寂しい気もするのですが

せっかくの飲み会です



美味しいものとかいっぱい注文して

お酒も、飲んじゃおう



いつものメンバーなので

(それも吉野先輩もいないので)

気楽に構えていました



山下先輩を含め

他のメンバーの皆は


夏休みは実家に帰るだの


レポートの提出が終わって無くて大変だの


たわいのない話で盛り上がっていました


お酒もすすんでいるようで、どんどんジョッキの注文がされていました


飲み放題というだけあってか、否か


十分元はとれそうです



「すみません・・・俺、なんか飲み過ぎたみたいなんで、ちょっと風にあたってきます」


そう言ったのは、今年サークルに入ってきた糸井君でした



私の真正面だったので、目に入っていたんですけど

確かに、ピッチが早かったんですよね



「大丈夫か?」


「はい、すぐ戻るんで心配しないでください」


糸井君はそう言って、席を立ち、お店を出て行きました



糸井君がいなくなってからも、他のメンバーは、ペースを変えることなく、飲み続け、サークルの主旨とは、関係のない話で盛り上がるばかり



私は、適当に相槌を打ちながら、皆の話を聞いていたんですが

隣の席にいた、野田先輩が、さきほどからお店の入口を何度も見ているのが目に入りました


「野田先輩、どうしたんですか?」


「糸井の奴どうしたかなって・・・もう20分くらい経つし」


言われてみると、時計の針がずいぶん進んでいました


「私、見てきます」


そう言って、席を立ち、私は店外に出ました


糸井君は、お店の向かいにある木にもたれ、タバコを吸っていました



「糸井君」


声をかけると、彼はびっくりした顔をしてみせました


「香山先輩・・・」


「野田先輩が、心配してたから様子見に来たんだけど、大丈夫そうだね」


「すみません、余計な心配かけて」


「ううん、それを言うなら野田先輩に」


「俺、できれば、香山先輩に心配して欲しかったんですけど」

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