第7話

先輩がよくても

私は、心の準備ができていないんですが



講義の間ずっと隣なんですよ?


それも憧れの先輩の隣



普通にいられる自信なんてありませんでした



ためらっていると、ガラっと扉が開いて、講義の教授が入ってきたので


覚悟を決めて先輩の隣に座ることにしました


「お、お邪魔します・・・」


「ここ、別に俺の家とかじゃないんで」


「そ、そーですよね」


と笑いながらも心臓のドキドキが止まりません



そんな私の心の動きも知らず・・・

というか、知っていたとしても変わらなかったでしょうけど


先輩は、表情を変えることなく

講義を聞いているようでした



集中しなきゃ



と思いつつも、隣の吉野先輩が気になって仕方ありません




こんな近くって初めてだよね?

サークルでも隣に座ったことって一度も無かったし

第一、会話もほとんどしてなくって



講義が始まっているのに、私は先輩が隣にいるということを意識しすぎて

ノートをとることもままらずにいました



講義中だっていうのに

何をやっているんだろう



そうは思っても、嬉しすぎて、教授の話も頭に入ってはきません




先輩が隣にいるんだ

こんな近くにいるんだ



せっかく隣の席だというのに

私は意識しすぎて

先輩のほうを見れませんでした



本当なら

どんな字を書くのかなとか

横顔とかを至近距離の今

見たかったんですけど



私にはそんな勇気もなく

ただただ


隣に先輩がいる



それだけしか頭の中には無かったのでした






講義が終わるまでの90分間は

長いような短いような



いえ、本音を言うと

引き延ばしてくれればいいな

という感じでした



先輩の隣の席に座るなんてこと

この先、皆無に近いだろうと思っていたから


先輩の隣に、私がいれるなんて皆無だから

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