第55話

「ごめん…ごめんね…愛美…」


藍美の声が震えていた。


何に【ごめん】なのか。


すぐに分かった。


「それでも、愛美が大好き…。何も言わない愛美に甘えててごめん…」


抱きしめる力が強くなる。


きっと感動で泣いている姉としか見られない状況だけれど。


藍美は、ずっとこの気持ちを隠していたのか。


「私の方こそごめん。藍美」


いつか、同じ人を好きになっちゃったね、

そんなふうに笑えあえる日が来るかもしれない。


それは、今じゃないけど。


今、言えるのは。


「おめでとう、藍美。

幸せになってね」


きっとさっきよりも、素直に

お祝いの言葉を伝えられた。

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