第54話

急に呼ばれてドキリとする。


すると、藍美がドレスを持って、私に駆け寄ってきた。


予定にはなかったのだろうか?

あきちゃんは「え」と小さく言い、スタッフが少し慌てている。


けれど藍美は気にもせず、こちらにやってくる。


危なっかしい足取りにハラハラして、思わず立ち上がり、藍美に駆け寄った。


「愛美は、最高の妹でした」


「え…」


シーンとした会場には、藍美の声がマイクがなくても響いた。


「今、ここで自慢させてください。優しくて、頑張り屋で、私にはあんなピアノは弾けません。たった1人の妹の愛美が、大好きです」


藍美あいみ…?」


「今までありがとう、これからもよろしくね」


そう言って藍美は、私を強く抱きしめた。


会場からは拍手があがる。


けれど私は、突然の藍美の言葉に驚いていた。


拍手は大きくなる。


その中で、藍美は私にだけ聞こえるように言った。

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