第50話

「あ、笑った」


「え?」


いたずらっぽく彼が笑う。


「愛美、やっと笑ったね。今日ずっと苦しそうで、泣き顔しか見てなかったから」


「あ…」


「愛美は笑ってた方が、可愛いじゃん」


「…!」


またいたずらっぽく笑う彼にドキリとした。


あきちゃんと同じ顔だからだろうか?さっきから調子が狂ってしまう。


「で、呼び方決まった?」


「じゃ、李人さんで…」


「付き合ってるのに?」


「え、えぇ…」


りひちゃんは無理だし、ってかりひ…呼び捨てはもっと無理なんだけど。

でもニコニコと何かを待つ…李人さん。


「俺は愛美呼びだしさ」


「じゃあ、李人…?」


「お、呼び捨てだ、やったー」


棒読みのやったー、に負けた気がするのは何でだろうか。


「じゃあ、俺は先に戻るから」


そう言って、彼はスタッフに促され、式場に入っていた。


ー私もメイク直していかなくちゃ…。


そう思い化粧室にパタパタと入った。


その足取りは、式場から出てくるよりも軽かった。

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