第51話

幸いポッケにコンシーラーとリップは入れておいたので、涙が流れた部分は直りそうだった。


ふと、鏡を見て気がつく。


ーあれ?


最初にここにきたときよりも、顔色がいい気がする。


ー泣いたせい?


思い出すと色々恥ずかしいが、吐き出したおかげで少しスッキリした気がする。


ーまあ、泣いた跡はなかなかやばいけど…


ここでさっきは【見つけてよ】と呟いた。


誰にも届かない声なはずだった。


それが、突然の出会いで、愛美まなみと呼んでくれる人に出会った。


しかも、あきちゃんの弟。


不思議な出会いといえばそうなるが、それでも嬉しかった。


藍美ではなく、ちゃんと【愛美】を見てくれる人がいたのだ。


気持ちが昂る。


けれど、やはり影のようにまとわりつくのは過去の自分だった。


信じたい。

李人さんのことを信じたいけど。


ーーー所詮【選ばれない】んだよーーー


過去の自分が、まだそう言っている気がした。

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