第41話

「そうだよ…」


彼の方は見れない。

目から溢れてくる何かなんて見せたくない。


「そうだよ!私は…私は…」


私の腕を掴む彼の手に、少し力が入った気がした。


けれど、私は下を向くことしかできなかった。


「私は、あきちゃんが好き…まだ、好きなの」


誰にも言えなかった想い。


伝えたかった。


あきちゃんに。


あきちゃんの隣にいたかった。


あきちゃんの彼女になりたかった。


「あきちゃんに選んで欲しかったの…!」


身体が前に崩れる。


涙で前が見えなくなって、体に力が入らなくなった。


その瞬間腕をぐいっと引っ張られ、気がつけば彼の胸に顔があった。


頭に手を回され、抱きしめられる形になっている。


逃げたくても力が入らない。


「う…うぁ…」


代わりに大粒の涙だけが落ちていく。


「泣いていいから…」


抱きしめる彼の手に力が入った。


「俺が、そばにいるから」

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