第40話

彼の言葉が後ろから響いた。


「知ってる。彰人が好きだって」


「…!」


目を見開く。

秋の風はまだ暖かかったはずなのに、急に冷たく感じた。


「分かるよ。君がさっきのキスに、俺と彰人を重ねたことも」


「何…で…」


まだ、後ろを向くことができない。

向いたら全てを見透かされてしまいそうだから。


気持ちが、溢れてしまいそうだから。


「好きな人を目で追うのは、自然なことでしょ?式場であんなに哀しげに彰人を見てたら分かるよ」


「…!」


お願い、それ以上言わないで。


愛美まなみをやっと見つけて、話したくて、でも、君はずっと違う人を見てた…そうだよね?」


何も、言えない。


何も、言いたくない。


何も、聞かないで。


お願い、言わないで。


「彰人が、好きなんでしょ?」


私の心にずっと秘めてきた恋心。

誰にも知られないように。

誰にもバレないように。


まるで頑丈な鍵をかけるかのように守ってきたもの。


それが、彼に破られてしまった。


「ごめん…知ってたのにキスして」


心の鍵がガチャンと外れる音がした。

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