第30話

愛美まなみに…」


こちらに顔を向けられてドキッとする。


一瞬彼に向いた顔を強制的に下にした。


あきちゃんと同じ顔で名前を呼ばないでほしい。


耳に悪いし、心臓にも悪い。


けど、耳が熱い。


「な、何言って…」


「羨ましかった。彼女がいる彰人が」


「…」


「俺は病室にいるのに、彰人は好きなことができる。それが羨ましくて仕方なかった。俺は双子だけど、神様に嫌われた方なんだってずっと思ってた」


「そう、なんだ…」


選ばれない人間。

私と同じく、そう思っていたひとがいたとは思わなかった。


けれど、今の話に、どこに私に惚れる要素があるのだろう。


あきちゃんが羨ましいなら、藍美に惚れて、藍美と恋に落ちてくれたら良かったのに。


そしたら、

そしたら…。


「けど、高校になって、彰人の奴、自分の彼女自慢しかしなくなったんだ。うざいにも程があるって思ってた時に」

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