第8話

お色直しのために、2人は退場した。


藍美が出たのを見て、私もスタッフに案内されて廊下に出た。


愛美まなみ!」


藍美が私を呼んだ。


ウェディングドレスの藍美が駆け寄ってくる。

そこには、あきちゃんも。


「愛美、よろしくね」


にこりと微笑む彼女。


私があきちゃんを諦めきれていないなんて、知らないような顔。


よろしくね、と頼まれたのはお色直しの際のピアノ。


私の唯一の特技はピアノ。


それなりに弾けるだけのものだけど。


お色直しに藍美とあきちゃんに弾いて欲しいとお願いされ、ひっそりと練習していた。


正直、何度楽譜を破り捨てたかったかわからない。


けれど、あきちゃん…好きな人の頼みには弱かった。


間違えないように、何度も何度も、毎日練習した。


「よろしくな、愛美」


にこりと笑うあきちゃん。


あきちゃんが私に微笑むのは、

ただ【妹】のような存在でしかないから。


そんなことは、察するまでもなかった。

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