第9話

スタッフに案内され、白いグランドピアノの前に案内された。


綺麗なピアノだ。


まるで私の心とは正反対の色。


【それでは、新郎新婦の再入場です!】


ポン…


鍵盤に手を落とす。


何度も練習したから指が覚えている。


「ほぅ…」と会場から感嘆の声が聞こえた。


けれどすぐにそれは私に向けられたものではないことがわかった。


ブーケのように花がたくさんのブルーのドレスに身を包んだ藍美と。


今度は青いタキシードを見に纏ったあきちゃん。


あまりにもお似合いの2人をテーブル席のキャンドルが照らしていく。


自然と拍手が鳴り響く。


ーリズムが崩れる…。


誰も私のピアノになんて耳を傾けていない。


誰も私のピアノのことなんて考えていない。


そんなこと、分かっていたはずなのに。


長調のはずの曲は、段々と短調になるような錯覚さえ覚えるほど、ピアノの音色は弱くなっていった。

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