第69話

「ぅ…」


泣いている彼女に俺は何もできなかった。


おどけて忘れ物したんだーとか言ってみる?


そんなのダメだ。彼女に不審がられてしまう。


じゃあ、


チャンス?


泣いている彼女につけ込んで…


いや、それもダメだ。


教室のドアに頭を預けて体重をかける。


俺は、知っているのだ。


ずっと彼女を見ていたから。


彼女が、どんなに彼氏のことが好きだったのか。


そして、俺の入る隙なんてないことを。

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