第56話

ブーブー。


マナーモードにしていたスマホが鳴る。


ハッっとなってスマホをバッグから出す。


「もしもし…」


『ごめーん!夏木さん、ちょっと書類のミスがあって手伝って欲しいんだよね!お昼休憩中ごめんね!』


「わかりました。すぐ行きます」


そう言って通話ボタンを押した。


逃げるようにお会計用の伝票を持っていこうとした。


けれど、その腕を深田さんに掴まれた。


「え、」


「僕が払いますから」


穏やかな笑顔だった。

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