第71話

「まさか、俺のために泣いてるとか?」


ニヤニヤ笑う玲唯。


「そうよ!」


「え?」


「あんたの…玲唯の想いはそんなものだったの?伝えなくて…よかったの?」


詩織ちゃんに恋焦がれていたとしても。


そんな玲唯も好き。


全部、全部、好きなのに。


玲唯が告白しなかったら、私の想いまで踏み潰されたみたいじゃない。


「ぅ…」


「ありがとな楓。でも俺、詩織の背中押せた自分も割と好きなんだよ。まあ言い訳だけど」


なによそれ。


かっこよくまとめないでよ。


「ってか、そんなに俺のために泣いてると、楓が俺のこと好きみたいじゃん」


「そうだよ…」


「え…」


玲唯の慰めていた手が落ちる。


世界がスローモーションみたいに見える。


玲唯の驚いた顔。


校庭からは花火の音。


ドーン、ドーンと鳴る音と、

生徒たちの歓声。


いっそ、かき消されてしまっても良かったのに。


その言葉ははっきりと口から溢れていった。


「玲唯が好き」


また、花火の音が聞こえる。

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