第72話

玲唯の瞳が揺れる。


「か、楓…」


あんたが、自分の想いを言わないから。


だから、私が言っちゃったじゃない。


高校最後の夏。


嘘偽りのない気持ちを伝えた。


ずっと、ずっと好きだった。


やっと、言えた。


玲唯の方を見る。


何だろう、今は笑えている気がする。


ばーか。


今だけは私のことで頭いっぱいでしょ?


大事な後夜祭で本当の気持ちを言わないからこうなるんだよ。


返事はいらないからー。


そう伝えようとした。


「俺も…」


「え…」


「俺も、楓が好き」


「は…」


思いも寄らない玲唯の言葉に、


私の瞳が揺れた気がした。

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