第70話

「なんで…」


「お前こそ、何で1人なんだよ」


玲唯が私の隣にくる。


「わ、私は人混みとかあんまり好きじゃないから…」


「なんだそれ」


玲唯が笑う。


窓の手すりに腕を置き、校庭を見つめながら。


「玲唯、花火は?」


「詩織としてきた」


目を見開く。


やっぱり、玲唯は…。


「春樹先輩もいたけどな」


「は…?」


「仲直りしろって、線香花火やりながら詩織に言ってきた。春樹先輩の姿が見えたから、2人に花火全部渡してきたよ」


「じゃあ…」


「当たって砕ける前に、砕けたって感じ」


「…!」


そんなに切ない顔で言わないでよ。


バカバカバカ。


あんたの想い、そんな弱かったの?


「え、楓…!?」


「ぅ…」


涙が出る。

泣きたくないのに止まらない。


「お、おいどうしたんだよ楓」


玲唯が頭をポンポンする。


バカ、本当にバカ。


あんたが泣かないから、私が泣いちゃったじゃない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る