第61話

隣のクラスはすでに暗い。


みんな帰ってしまったようだ。


ー私も早く帰ろ…


そう思った時だった。


「泣くなって…」


玲唯?


足が止まる。


振り返って暗い教室の中を見る。


「ぅっ…ぅぁ…」


二つの人影。


誰かが泣いている。


それを慰めているのは、間違いなく玲唯だった。


「ごめんね、玲唯」


「大丈夫だって。詩織」


反射的にドアの窓からのぞく。


ドクン、と心臓が鳴った。


二つの人影は月明かりに照らされてはっきりする。


玲唯の胸を借りて泣いている詩織ちゃん。


そしてそれを抱きしめるように慰めているのは、


紛れもなく玲唯だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る