第54話

「結局海唯と紅羽でまわってるようなもんだよなー俺らいるのかな?」


さっきのシリアスなテンションとは打って変わって、海唯くんと紅羽はテンションMAXで見るもの全てにリアクションをしていた。


「あいつらデートしてるみたいだよなー」


「可愛いよね」


「海唯のやつ、紅羽ちゃんのこと好きなのかな?」


玲唯が首を傾げる。

弟のことには疎いようだ。


「さぁね」


そう言って玲唯の隣を歩いた。


同じTシャツに、同じ歩幅。


いつも一緒に登校しているくせに、右側に玲唯がいるせいか、右だけ熱く感じる。


「そういえばさ、今日なんだっけ…その髪」


「ん?」


「ほら…結んでんじゃん。水色のリボンして」


「あー」


ポニーテールのことだろうか?

接客や調理に邪魔だと思ってまとめたのだ。

大きめのリボンは里奈が貸してくれた。


「可愛い」


「え?」


「いつもと違って可愛い。孫にも衣装って感じ」


ニカッと笑う玲唯。


「それ褒めてるの?」


「当たり前じゃん」


頬が一気に熱くなるのを感じる。


ー可愛い。


そんな褒め言葉が女の子にとって満点だなんて、玲唯は知らないんだろうな。


ポニーテールの毛先を触る。


ーずっとポニーテールでもいいかも。


そんなことを考えていた。

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