第52話

「玲唯くーん!」


「おう!」


デートという文字はすぐさま砕け散った。


妹の紅羽と、玲唯の弟、海唯かいくんがいた。

どうやら学校が終わり、両親に頼み込んで2人できたらしい。


…私、聞いてないんだけど…


「お迎えきてくれてありがとー!玲唯くんの店行きたい!」


私には脇目もふらず、玲唯の左手に自分の手を絡ませる紅羽。


どこで性格が変わったのだろう?と考えてしまう。


「俺んとこか?飲み物の店だから他のとこにしよ」


「えー!お化け屋敷とか?ねぇ!玲唯くんのオススメの店とか行きたい!」


「おっしゃ。じゃあ色々回ろうな」


「うん!」


これじゃあ紅羽と玲唯がデートしているみたいじゃないか。

とりあえず置いていかれないようにする。


「はぁ…海唯くん、私たちも行こうか」


「そうですね」


海唯くんは玲唯とは違ってサッカー部。

昔から礼儀正しく、紅羽の話によるとかなりモテるらしい。


まあ、兄譲りのイケメン顔だもんなと思う。


「あの、楓さん」


「楓でいいっていっつも言ってるじゃん」


「楓さんの方が呼びやすいので」


こういうことをナチュラルにできるからモテるのだろう。小学6年から学ぶモテ技術。


「それで、あの。兄さんとは付き合うことになったんですか?」


「は?」


小学6年生はまだ小さい。

見上げるように聞いてくる海唯くんは、燃えるよう瞳をしていた。

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