第47話

「か、え、で〜今日も仲睦ましく登校してたね〜」


「何、里奈どうしたの?」


自分の席につくと、一目散に里奈がやってきた。


あの後、

他愛もない話をして、一緒に登校したまでは良かったが、他のバスケ部員に連れられ、玲唯は詩織ちゃんのクラスに行ったのだ。


なので、少し不機嫌。


「ねぇねぇ、玲唯くんって本当に詩織ちゃんが好きなの?」


「はぁ?皆そんなこと知ってるじゃん」


「でも噂になってるよ。本当は大切な幼馴染が好きなんじゃないかって!」


「お、幼馴染…?」


「楓のことに決まってんじゃーん!」


肘で頭をつつかれる。

病み上がりなのだからやめて欲しい。


ってか、なんでそんなことに…。


「どういうこと?玲唯なんて詩織ちゃんを見つけたら走ってくようなわかりやすい行動ばっかだよ?」


「そ、れ、が、さー。

一昨日、5時間目と6時間目の間に急に先生に頭下げて『帰ります!』って。先生もいきなりすきてびっくりだし、周りも玲唯くんの焦りっぷりにびっくり」


「…!」


「血相変えて走る玲唯くんに慌てて男子たちが聞いたら、【楓のとこに行くんだよ!】って走って行っちゃったんだよ?めっちゃかっこよすぎてドラマかと思った」


「れ、れいが?」


「もうその後クラスが盛り上がっちゃって【玲唯くんって楓のことが好きなんじゃね?】って話題でもちきり。まあ一昨日のことだから皆忘れてるけど」


玲唯がそんなことをしていたなんて。


「で?結局そのあとどうなったのよ!」


にんまりした里奈の表情。


けれど、私の心は沈んでいた。


ー玲唯が、私のために…。


あの日、急いで私の家に来てくれたのに…私は、玲唯にキツイ言葉しか投げていない。


「ちょ、ちょっと楓?なんか暗くなってない?」


「あーうん…別に何にもなかったよ」


「えー!ほんとに!?」


「それに…【幼馴染が心配】ってはっきり言われたから…玲唯はやっぱり詩織ちゃんのことが好きなんだよ」


「え〜なんか行動が矛盾してる気がするけど?」


里奈は納得がいっていないようだったが、

これ以上掘り下げられることはなかった。


玲唯が他の男子と教室に戻ってくる。


ーやっぱり詩織ちゃん可愛いよな。


ー玲唯、文化祭終わったら頑張れよ。


ーわかってるって。


にこやかな会話。


聞きたくない言葉が耳に入る。


里奈にもその声は聞こえたようで「思わせぶりじゃん」とちょっと怒っていた。


その里奈の怒りに少しだけ助けられたことは、黙っていた。

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