第42話

ベットから起き上がって座っている玲唯と目を合わせる。


「ってか6時間目は?」


「サボった。文化祭準備だし」


文化祭準備は他のクラスに行っても怒られない。

つまりは詩織ちゃんに会える時間なはず。


「…出た方がいいでしょ」


「お前の方が心配だって」


思ってもみないセリフにドキリとする。


「幼馴染が1人で熱出してんだから、フツーにくるだろ」


あぁほら。


ジェットコースターみたいに気持ちは揺れ動く。


「鍵空いてたから入れただけじゃん」


「それは楓が開けてたから」


「うるさい!」


「…!」


玲唯が目を見開いた。


「なんだよ。楓。お前最近おかしくね?いや、割と毒舌なのはいつもだけど…なんか俺に言いたいことでもあんの?」


まっすぐな目を向けられて、視線をそらす。


ーあぁ…頭痛い。


熱…上がってきてる気がする。


「楓に隠し事されんの、俺嫌なんだけど」


「だったら…!」


ダメ、

それ以上は口に出してはいけない。


強く唇をかむ。

言葉を堰き止めるように。


最近何度も唇を噛んでいるせいか、痛みを感じなくなってきた。


でも、この気持ちだけは伝えてはいけない。


「なぁ、楓ー」


途端にぐるりと視界が回転した。


「ー!楓!」


焦る玲唯が、薄れゆく視界の中で見えた。


もう全部、夢になれ。

夢だったら傷付かなくてすむから。


「楓…!楓…!」


耳元で声がする。


ごめんね、玲唯。


本当はさ、悪態なんてつくつもりなかったの。


ごめんね。


本当に言いたかったのは、


ーありがとう…ー


だったね。


そう思いながら、私は意識を手放した。

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