第37話

夢を見る。


私の10m先くらいに、玲唯がいる。


指定の白いワイシャツに黒のズボンの玲唯が手を振っている。


にこにこと笑顔で。


ーあぁ、玲唯が、私を見てくれている。


そう思って手を伸ばそうとした。


すると、


横から誰かが走って行った。


ーだれ…?


長い髪をなびかせた、私より小さい女の子。


可愛く制服を着こなした誰もが振り返る美少女。


ーしおり、ちゃん…。


詩織ちゃんは私には脇目もふらず、玲唯の元へと走って行った。


私の伸ばそうとした手がぴたりと止まった。


玲唯は詩織ちゃんの頭に手を置いて、優しく撫でた。


詩織ちゃんの顔は見えない。


どちらかというと詩織ちゃんの顔はぼやけているのに、玲唯の顔はハッキリと見えた。


優しくて、恋人にだけ見せる笑顔。


あの試合の日、玲唯が見せたあの恋する顔。


玲唯の周りがキラキラする。


ー待って。


あれ?声が出ない。


それは泡沫のように、

2人で魔法にかけられたかのような光の中に

消えていく。


ー玲唯…。れい…!れい!


待ってよ。


走って追いついたと思ったのに、

玲唯の姿はもう何処にもなかった。

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