第34話

枕でも投げて追い払ってやりたい。


こんなに幸せそうな顔をする玲唯なんて見たくなかった。


「告白…うまくいかなくても、ちゃんと伝えたいんだよ。こんなこと、楓にしかいえねーや」


「…頑張れば?」


「さすが幼馴染」


「別に…」


「なぁ、俺もさ。楓に好きな人がいるなら手伝うから。よく文化祭マジックとかあるだろ?」


「だからいないって」


「ほんとにか?」


「うん…」


「じゃあ、ちゃんと好きな人できたら教えろよ。何年後でも聞いてやるから」


ニカッと笑う玲唯。


私の気持ちなんて1ミリも知らないような顔。


「もし…」


「え?」


「もし、好きな人いるっていったら、ちゃんと聞いてくれる?」


「当たり前じゃん。幼馴染だし」


じゃあ…


喉に、言葉がつっかえる。


ー玲唯が好きー


そう伝えたら?


「やっぱりいるんだろ」


誰だよ、と顔を近づけてくる玲唯。


ドクン、と心臓がなる。


このまま、この雰囲気に甘えてしまったら…。


「誰?俺の知ってる人?」


だからー。

だからね。


ブー。


玲唯のスマホが鳴った。

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