第33話

お腹のあたりがドロドロするのを感じながら言葉を紡ぐ。


「詩織ちゃん?どう告白するかとか?」


「まあ、告白は文化祭終わった後夜祭の時かなって…思ってる…」


私の方を見ないで、机に両手を置いて、行儀良く座る玲唯。


その頬は赤く染まっていく。


「後夜祭って…花火OKとかだっけ」


「そう、そん時にバスケ部で集まるから…」


「2人きりじゃないんじゃん」


「まあそうだけど…そうなんだよな。なんかいい案ない?」


「…知らないよ」


「なんか素っ気なくね?楓」


当たり前だよ。

今すぐスマホを投げつけてやりたい。


でもそんなの八つ当たりだから、ドロドロしたものを制御する。


けれど、抜けていくドロドロとした感情は言葉になって玲唯に向かった。


「ってか、詩織ちゃん彼氏いるって聞いたけど?」


あくまで、冷静に。

でも、残酷に。


玲唯の表情に影が落ちた。


ーそんなこと言いたいんじゃないのに。


「分かってるよ。痛いほど。でも好きなんだよ」


「…」


「楓も好きな人いたら分かるよ」


笑いたくないなら笑わなきゃいいのに。

そんな顔を向けられて、なんと答えたらいいのだ。


いっそ。


ー玲唯が好きー


と言ってしまいたい。


「私は、わかんないや」


嘘つき。


「そんなに本気になって、辛くないの?」


言葉のナイフをさして、嘘をつく。

そのナイフは私にも刺さってくる。


「辛くないよ。俺、詩織のおかげでバスケで活躍できたから。まじで好きなんだよ」


あぁ。


痛いなぁ。

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