第30話

「ただいま…」


足取りは重く、玄関の扉を開いた。


そこには紅羽がいた。


「お姉ちゃん、玲唯くんと帰ってこなかった?ねぇ、付き合ってるの?」


「はぁ?」


「ねぇ!玲唯くんは紅羽が告白するのー!」


ぴょんぴょんと周りを飛び回る妹。

黒髪のツインテールも合わせて飛んでいた。


こんなに何も考えずに好き好き言える妹が羨ましい。


「はぁー…違うって」


「違わないよ!だって一緒に帰るのは恋人同士だもん。」


「えぇ?」


どこでそんな知識を入れてきたのだろう。

最近ハマっている少女漫画だろうか?


靴を脱ぎながら、紅羽に真実を伝えた。


「あのね、玲唯はちゃんと好きな人いるから。諦めなさい」


「え、ぇ?えええええええええ!!!」


耳がキーンとなるような紅羽の声。


キッチンから母の「近所迷惑!」という声が聞こえた。


その声は紅羽には届かなかったようで、玄関で固まっていた。

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