第29話

家が隣同士。


けれど玲唯の方が高校にたった少しの距離、近いので先に家に入る。


「じゃーな!」


そう言って玲唯が手を振って、私の方をもう一度見ることはなく去っていく。


ー詩織ちゃんなら?


詩織ちゃんなら、玲唯はきっと送って、そしてドアが閉じるまで見ているんだろう。


私は玲唯の何者にもなれない。


いつか誰かが言っていた。


ー幼馴染じゃない関係から始めたかったー


今ならその気持ちがわかる。


玲唯と、どこかで違う形で出会いたかった。


そしたら、片想い相手になれたのかもしれない。


いや、なれなくても。


【幼馴染】なんて関係ない縛られることなんてなかった。


「ばか…」


今日1日で何回バカと言っただろう。


それは玲唯に対してなのか、それとも意気地なしの私に対してなのか、

もうわからなかった。

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