第25話

「俺ら最後の夏だし!意外と寂しい感じ入っててもよくね?なんか逆に味があるって感じしね?」


ドクンと心臓がはねた。


「た、確かに…玲唯くんたまにいいこと言うね!」


女子が焦ったように声を出す。


「でもさ、このままだと楓1人の意見だろ?とりあえずみんなに聞いてもっといいアレンジがないかさがそうぜ!」


「い、いいねそれ!」

「そうしよ!」 


周りの子が賛同する。


誰も責められないようにする玲唯の言葉。


そういう優しいところがずるいのだ。


ポンっと頭にスケッチブックを落とされた。


「いた…」


「何泣きそうな顔してんだよ。後でアイスおごれよ」


ボソッと玲唯が言う。


「なんでよ…してないし」


「6時ぐらいに帰るからな」


そういってまた自分の係のところに戻った。


「はぁ〜ヒーローかよ、あいつ」


里奈がニヤニヤして私の方を見る。


「どうせ【幼馴染】が困ってたから、とかそんな理由でしょ」


「顔赤いけどな〜ってか、いつも玲唯くん楓が困ってるところ見逃さないよね」


「だからそれは」


「【幼馴染】だから、ね。はいはい。でも楓のことはやっぱり特別なんだと思うけど」


特別…。


嬉しい、嬉しいけど。


やっぱり詩織ちゃんに向けられた笑顔を思い出すと、それは【幼馴染】の特別を超えないことは分かっていた。

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