第24話

「楓はTシャツのデザインも考えなきゃだよね」


里奈のその一言を聞き、私はカバンの中からB5のスケッチブックを取り出した。


「実は色々考えてるんだよね」


「へぇー!可愛いじゃん」


意外と絵が得意な私は何パターンかTシャツのデザインを考えていた。


うちのクラスのテーマカラーは水色。


それに会う青春ぽいイラストを考えていた。


例えば、派手にジュースが飛び散るデザインの爽やかなもの。


青春ぽい手紙と糸が結んであるもの。


だからといって、私のデザインが採用されるわけではないことは分かっていた。


里奈のページをめくるたびに出る感嘆の声に他の係の女の子たちが集まってきた。


「楓ちゃん、絵うまっ!」


「このデザイン好きかも!」


「そ、そうかな?」


突然褒められてどんな反応をしたらいいかわからない。


「でもなんか、悲しい感じしない?」


「え?」


「ジュースのイラストとか、なんか雨みたいな感じ?するかも」


「…?!」


うんうんと、他の女の子が同調する。


褒められている、のか分からなくなる。


もしかして、気持ちが透けてしまったのだろうか。


だとしたら…恥ずかしい…。


「美術部の子に頼んだらもう少しポップなのになりそうじゃない?」


「確かに!楓ちゃん!アレンジしてもらおうよ!」


みんなのキラキラした目に悪意はない。

けれど、逃げ出したい。


何かが、見透かされたようで、たまらない。


「そうか?」


スッと私の手元からスケッチブックを奪い取ったのは、

いつのまにか後ろにいた玲唯だった。

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