第26話

「おっ」


「なんで…」


帰宅しようと、里奈と下駄箱に向かうと、そこには下駄箱に寄りかかって、イヤホンをさしている玲唯がいた。


玲唯の係は早めに終わって解散したはず。


かくいう私たちの係はそのままTシャツの話が盛り上がり、すでにスマホの時計は7時をさしていた。


「いった!」


「はぁ?」


里奈に背中を思いっきり叩かれたが、玲唯は気付いていないようだ。


「じゃあね、楓。また明日」


また明日、の部分を里奈が強調した理由を考えないようにした。


「わり、帰る予定あった?」


「まあ、そうだけど…」


なにこの沈黙。


どうしたらいいんだ?


「えっと…」


「ってかおせーよ。6時って言ったじゃん」


「それだけじゃわかんないって」


玲唯が進むのに合わせてその背中を追いかけた。


「幼馴染なんだから、それくらいわかれー」


玲唯は笑いながら、私の前で言った。


ズキッと音がどこかから鳴る。


「わかんないよ」


「え?」


「言ってくれなきゃ、わかんないよ!」


バシッと玲唯の背中を叩いた。


「いってーな。何怒ってんだよ」


「幼馴染だからって、何でも分かるわけじゃありません!」


「あぁ、確かにそうか」


何納得してるんだこの男は…。


ふむふむ、みたいな顔で立ち止まる玲唯。


いつのまにかイライラして玲唯を越してしまっていた。いけない、いけない。


一緒に帰れるのは、嬉しいのだ。


「まあ、遅くなった私がごめんだけど…」


そう言って後ろを向いた瞬間だった。


「あのさ、楓」


「ん?」

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