第10話

「はぁ…はぁ…おはよ玲唯。楓ちゃんも」


「うん…」


右肩に下げているスクールバックを、両手で力を入れて握りしめる。


私はうまく笑えているだろうか?


「めっちゃ息切れてない?詩織」


「うん!玲唯が見えたから走ってきちゃった」


詩織ちゃんのゆるーく巻いている髪が風でなびく。


頬を染めた笑顔に、大きい目。


可愛い声。


誰もが、憧れるような女の子。


「なんか用か?」


私の隣にいた玲唯が詩織ちゃんの前に一歩進んだ。


ーやだよ。


ーいかないでよ。


唇を強く噛んでも、玲唯が私の方を見てくれることはなかった。


邪魔者だと気付いた私は、「…先行く」と言って校舎へと進んだ。


けれど玲唯が何か声をかけてくれることはなかった。

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