第4話

「おはよう、渓くん」

「あぁ、おはよう。制服似合ってんじゃん」

そう言ってくしゃりと頭を撫でてくれた。

朝起きたら、いつもなでてくれる。

「入学おめでとう…と言いたいとこだけどね、  彩葉。高校入学にあたって約束して欲しいことがあるんだ」

「…? なに?」

口の中にあるパンを飲み込んでから聞いた。

乃々花ちゃんが珍しく真剣な表情をしているから、思わずドキッとしてしまう。

本当乃々花ちゃんは黙ってれば美人なんだけどなぁ。(←あんたもな)

「まず、暴走族にいそうな奴とは関わらない」

「彩葉なら、絡まれても平気だろうが」

「極力、ね。自分から行くつもりないもの。 心配しなくても大丈夫」

スムージーを一気に飲み干して立ち上がる。

「それじゃあ、私もう行くね。行ってきます」

「ちょっと待った、彩葉! もう一つ、あの話はすんな。避けろ」

家中に響く大声で渓くんが言った。

心配しないでよ、私は大丈夫なのに。

「分かってるよ。しないから、安心して」

そう言った私は、多分苦笑いになってた。

そのまま出てきた私は、知らなかった。

渓くんがどんな顔をしていたかなんて。


少しずつ慣れてきた景色を眺めながら、

私は学校に向かう。


私は、普通の高校生活が出来ると、思ってた。

そんなの只の願望に過ぎなかったんだ。


大嫌いなものをこの瞳で見るなんて

それだけは、勘弁したかった。

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